全１９６話を数え、長く親しまれた杉良太郎主演のテレビ時代劇『新五捕物帳』。なかでも、本DVDに収録されている第５３話から第８０話は、名作の多いシリーズの中でも珠玉のエピソードが詰まっている。 『新五捕物帳』が視聴率を伸ばし続けて大ヒットしたのは、より良い作品を作るために演出や脚本、キャスティングなどすべてに関わり綿密な打ち合わせを繰り返した杉良太郎の熱意に加え、「私を理解しているハートのある人物」と杉良太郎が評する脚本家・白井更生がメインライターに座ったことも要因の一つだろう。 白井は本DVDに収められている２８話のうち１０話を担当し、新五を中心とする濃密な人間模様、その中で揺れ動く人間心理の奥底に迫った感動のストーリーを作り上げ、視聴者の涙を誘った。傑作揃いの１０本の中でもベスト２と言えるものを紹介してみよう。 １つ目は茅島成美をゲストに迎えた第５７話「津和野かげろう」。母親の復讐のために夜鷹に身を落とした女・お栄と、新五が周囲の反対を振り切り、十手を捨ててまで一緒になろうとする一緒になろうとするラブストーリー。キスシーンまで描かれた新五とお栄の哀しい愛の運命に、視聴していた「杉様」ファンはさぞかしやきもきしながらも、ラストシーンで感涙にむせび泣いたことだろう。 シリーズ最高視聴率を記録した第６７話「悲恋おんな坂」。犯罪者の父親に岡場所へ売られ、体を蝕まれた娘・お市と新五の悲恋物語で、全１９６話を通じても屈指の名作。お市が残り少ない命とわかっていながら、元気になってほしいと優しく語りかける新五の温かさが心に響く。杉良太郎と共演の多い本阿弥周子による絶妙のアンサンブルが、完成度の高さに大きく貢献している。 三味線漫談家の都家かつ江が、第６２話で三味線と自慢の喉を聞かせるシーンも注目ポイントだ。また、小林幸子、犬塚弘などミュージシャンが多数ゲストで登場している作品が多いのも本DVDの特徴と言える。この他、加藤嘉や大木実、小沢栄太郎など戦後の映画・テレビドラマを支えた名優に加え、田島令子、葉山葉子、島かおり、藤村志保、服部妙子など時代劇を彩った美人女優が各話に登場するのも見逃せない。 視聴者に至高の時間を提供した杉良太郎と『新五捕物帳』。その煌めきの数々と、家族愛や友情、そして男の美学に満ち溢れた作品が収録されている本DVDをぜひご堪能いただきたい。